農福連携シンポジウムin砂防会館

 農水産政策研究所主催の「農福連携」シンポジウムが東京千代田区の砂防会館で開催され、ドイツ人の講師2人が講演された縁でお2人の講演を聴いての感想を述べるコメンテーター役として参加させて貰いました。

 今回は日本でも初めてのドイツでの事例紹介ということもあって300人を超える大勢の参加者に「農福連携活動」の認知度が非常に上がったことを実感させられたシンポジウムでした。

私のコメントの内容は以下の通りです。

1.ドイツは16州からなる連邦制の国なので、外交、防衛、そしてEUの政策などは連邦政府が統括しているが、農業や教育、福祉などの政策は州政府に任されているので、それぞれの州が地域的な特長を生かして実行されている。よって、今回紹介された事例はドイツの事例と云うよりもヘッセン州(フランクフルトのある)の事例であるとして聞いて欲しい。

2.ヘッセン州は全国的にも環境や福祉政策に関しては先進的な取り組みをしており、今回紹介された2つの事例はどちらもヘッセン州の団体であるので、ドイツ国内でも先進的な事例として捉えて良いと思う。

3.ドイツ人は、「障害」を自己責任としてではなく、社会的責任として捉えており、障害者も含めた全ての人が平等に職業訓練を受ける権利が保障されており、教育や訓練に関しては自己負担は少ない。

4.18歳:成人を迎えれば、自立が求められ、1人で自立出来ない場合は国が責任を持って面倒をみる。具体的には、大人になれば家族と別れて経済的に分離されても暮らし生きていくことが可能である。

5.畜産動物の飼育に関しては、動物福祉の観点から「いくら最後は賭殺されて人間の食料になるとしても、それまでは、豚、牛、鶏など、それぞれ個が持つ特性を尊重した飼育方法を施さないと、消費者から批判され買って貰えない。日本ではまだ認知されていない「動物福祉」が重要視されている。

6.作物栽培に関しても動物福祉同様「有機農業」が注目されており、有機栽培されたものは、それれなりの価格で販売されている。

7.循環型の農業が注目されており、大量生産、大量消費、そして大量廃棄というこれまで日本の農業の常識?は、ほぼ否定されている。

8.2つの団体の経営の特長は、生産、加工、販売、交流、そしてその他業種というように多種多様な「しごと」を創設しており、障害者やそこで働く人が「しごと」を選択できるようになっている。

9.個々の差はあるが、共同体、みんでやることで良い仕事が出来、そして生産性、収益も向上する。

10.地域にある様々な団体、企業と連携することで障害者のしごとの質を高め量を増やすことが可能である。

11.団体が運営する農場や施設は常にオープンになっており、ハンディキャップのある人たちと一般市民の交流が日常的に可能となっているので、一般市民の障害者、障害の理解が進んでいる。

12.ハンディキャップのある人たちが安心して生きられる社会を創造することが、経営理念に掲げられており、雇用や訓練、そして生産性の向上が一番の目的ではない。

 雇用率を上げること、障害者の工賃を倍増すること、そして障害者個々の生産性を向上されることを主目的にしている?日本の障害者雇用の政策疑問を感じる。  以上